【天使の片翼】
カルレインの低い声にも焦りがにじむ。
嫌な予感がした。
他の子どものときはもっと楽に産まれた気がする。
「おそらく、へその緒が首に巻いているのでしょう」
「なんだと?」
「このままいきんでいても、産まれません。
早くしないと赤ん坊が危険です」
全員の視線が、産婆に集まる。
「では、どうするのだ!!」
カルレインが声を荒げたが、産婆は落ち着いて目を閉じた。
数泊思案した後、すぐにリリティスを寝台に横にする。
「ルシル、リリティス様の上に乗ってお腹を押しなさい。
私が赤ん坊を引っ張り出します」
「わかりました」
何人もの兄弟の世話をしてきたルシルは、落ち着いていた。
出産に立ちあうのも、一度や二度ではない。
そして、助からない命を見たことも。
なんとしても、へその緒が赤ん坊の首を絞めて窒息する前に、手早く取り上げなくてはならない。