【天使の片翼】
ファラは、驚いたように目をくりくりとさせた。
目の前にいる真っ赤な顔をした赤ん坊は、元気よく泣いている。
それでも、あまりの小ささに、ファラは手を伸ばすことができないでいた。
ためらうファラの手を握って、リリティスがにっこりと微笑んだ。
それに押されるように、ファラは恐る恐る手を伸ばす。
その小さな、重い命に。
「体を胸につけて、首を支えてくださいね」
ルシルがファラの手を取って、抱き方を教える。
「うわ、軽い!」
人形のような軽さに、ファラは驚いた。
赤ん坊を抱いたことはあるが、首を支えなくてはならないほどに小さいことは初めてだ。
人形と違うのは。
・・あったかい。
抱き上げたとたん、赤ん坊は泣き止んだ。
代わりに、ファラの大きな両目から、涙が溢れ出た。
これが、命か。