【天使の片翼】
胸の中に、何か暖かい感情が流れてきて、ファラは嗚咽を漏らした。
赤ん坊は、一生懸命、何かを探しているように頭を動かす。
いったんは泣き止んでいたものの、すぐにまた、んぎゃ~、と声を張り上げた。
「あ、ごめん。もしかして、抱き方が悪いの?」
あまりの小ささに、落っことしてしまいそうでファラは不安になった。
「おっぱいを捜しているんですよ。
それがないから、怒っているんです」
産婆が、顔のしわを深くして、にこやかに笑う。
ファラが赤ん坊を慎重にリリティスの隣に寝かせたのと同時に、
リリティスの汗を拭いながら、では、とルシルが声を張り上げた。
「そろそろ片づけがありますので、皆様はお部屋の外へいらっしゃってください」
「ちょっと待て!俺はまだ抱いてないぞ!」
寝台の脇で、赤ん坊を覗き込んでいたカルレインが、眉根を寄せる。
「後でいくらでも抱かせて差し上げます。
今は、リリティス様と姫君の体調を考えるのが一番です。
お二人とも、体力を消耗しているのですから、ゆっくりお休みいただかないと」
見苦しいものも片付けなければ、などといいながら、半ば強引に。
部屋にいた人間は、侍女を残して一斉に追い出された。