【天使の片翼】
「なんだ」
思った以上に不機嫌な声が出た。
「あ、あの。お食事はどうなさいますか?」
空腹なのだとは思う。しかしとても、食べる気にはなれなかった。
「いらない」
必要な返事を聞いたはずなのに、レリーが去っていく気配がない。
少ししてから、ソードは枕に押し付けた顔をレリーのほうへと回転させた。
「なんだ、まだ何か用か」
「い、いえ。その・・・」
レリーは目を伏せて小さな唇をもごもごと動かした。
「用がないなら出て行け。俺は、眠いんだ」
眠りたいわけではなかったが、一人になりたかった。
が、レリーはか細い声で、ソードに話し始めた。
遠くから、笑い声や、歌が聞こえてくる。
それでもこの空間は、そこだけが切り離されたようにひっそりとしていた。