【天使の片翼】
幼い頃からレリーを知っているソードは、彼女の境遇に自分を重ねることもあった。
カナン出身の親。愛情の不足。そして同時に失った肉親。
だから、自分を助けるために、レリーがカルレインに助力を頼んでいた事を知ったときは、
驚きよりも前に、ひどく納得した。
あぁ、レリーなら、自分を助けてくれてもおかしくはない、と。
あれだけ憎いと思っていたカルレインへの気持ちが一瞬でしぼんでしまったのも、
レリーがずっと自分を見守ってくれていたのだとわかったからだ。
シドの死に受けた衝撃から、思った以上に早く立ち直れたのも、
やはり、彼女が傍にいてくれたからだった。
この世にたった一人、自分を見捨てないでいてくれる人がいる。
だから彼女の言葉に、耳を傾ける気になったのかもしれなかった。
レリーと目が合うと、彼女は少し頬を染めて、微笑んだ。
「私、母に愛されていたのだと、今日初めてわかったんです」
その言葉の意味が、ソードには釈然としない。
どうして、今日、それがわかることになるのだ。
レリーは、優しい顔をして、けれど力強く口にした。
「母は、あんな風にして、私を産んでくれたんですよね」