【天使の片翼】
雷に打たれたように、ソードはその場に固まった。
レリーの言いたいことが、はっきりとわかった。
“私”で語られる話は、つまりソードにもいえるということ。
「自分を誰かと比べていても、仕方がありませんものね。
私は、私に与えられた生を、精一杯まっとうしなくては」
「そうかも、しれないな」
積み重なる日々の生活の重石が、母親の愛情を変化させてしまったのかはわからないが。
少なくとも産みの苦しみを味わった、その時点においては、
母は自分を愛していたのかもしれない。
辛い日常から逃げ出したくて、心を閉ざしたけれど、
本当はいつだって愛されたかった。いや、愛していたかった。
けれど、愛しても返ってこない愛情を待つのが苦しくて、愛する事を放棄した。
「レリー」
「はい」
「疲れたから少し眠る。レリーも少し休め。
起きたら呼ぶから、食事を運んでくれるか?」
「はい!」