【天使の片翼】
「ファラ様?どちらへ行かれるのです?」
歩き出したファラに気づいたレリーが、食べ物の入った器を両手にして、声をかける。
「ん。ちょっと散歩してくる」
レリー、と彼女の名を呼ぶのは、少し背が伸びて男っぽくなってきたソードだ。
レリーは、失礼します、と頭を下げて踵を返した。
楽しそうに笑う二人の笑い声が、ファラの耳に届いた。
・・ソード。心から笑えるようになったね。
レリーも楽しそうだし。良かった。
ホウト国で見るソードの笑顔は、いつもとても綺麗だった。
まるで、その形に笑うことを練習しているみたいに。
あるいは、皮肉たっぷりの他人を軽蔑したような笑みか。
その笑顔に自分の胸が騒いだ事をファラは思い出した。
あれは、作り物だった笑顔に対する違和感だったのだろう。
上品、と言えばそうなのかもしれない。けれど人形のように笑っているよりも、今の笑顔の方がずっと素敵だ。