【天使の片翼】

太陽の光を浴びて、きらきらと輝いているその水辺に、ファラは思わず声を上げた。


「うわ~!懐かしいな。

ちっとも変わってないんだ。ここ」


それは、小さな滝のある湖だ。

支流は、旅したことはないが、遠くカルレインの出身国であるノルバス国へと繋がっているらしい。


危険だから、大人がいるとき以外は決して入ってはいけない、と

口をすっぱくして注意された場所だ。

それでも時々こっそりやってきては、浅瀬で足をつけて遊んだものだ。


ファラは、首をめぐらせてあたりを見渡した。

美しい水面に、気持ちがうずうずするのを押さえきれない。



・・ちょっとくらいなら、いいよね。



足をつけるくらいなら。

靴を脱ぎ捨てると、ファラは、丁寧に野茨(のいばら)の刺繍が施されている衣の裾をつまんで持ち上げた。

そっと足を水に浸すと、ひんやりとした感触が心地良い。



・・気持ちいいな。ソランも誘えばよかったかな。



なんとなく喧騒を離れて一人になりたいと思ったのに、ソランの顔が頭に浮かんだ。



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