【天使の片翼】
「お願いソラン。目を開けて・・・」
絞り出すような声で話しかけた。
溢れ出る涙が邪魔をして、ソランの顔がよく見えない。
森の中で誕生会がしたいだなんて、言わなければ良かった。
どうしてこんなことになってしまったのか。
しゃくりあげるファラの声に反応してか、ソランの体がぴくりと動いた。
「ファ、ラ」
「ソラン!」
ソランの瞳はわずかに開かれたが、それはうつろで生気が感じられない。
ソランの右手が、空中を彷徨ってファラの頬にゆっくりと触れた。
「また、泣いて、る、のか。本当に・・・泣き虫だ、な」
「だって」
「あの・・・時も、泣いてたな。
僕の、守り方って、そ、んなに下手・・・か、な?」
途切れ途切れのソランの言葉に、ファラは必死で耳を傾けた。
「このまま死んだりしたら、私一生泣いて暮らすんだから。
そしたら、ソランのせいなんだからね!」