【天使の片翼】
「ソラン!しっかりして」
「あぁ、僕は大丈夫だ。
・・ファラは、怪我はないのか?落馬したから、あざになったんじゃないのか」
ソランの視線を避けるように、ファラは目をそらした。
やっぱりだめだ。ソランの声を聞けば涙腺が緩んでしまう。顔を見れば嗚咽が漏れる。
意識が戻れば大丈夫だろうと、医者は言っていたが、それでもどうしようもなく不安だった。
目が覚めたソランに涙を見せたくなくて、急いでルシルを呼ぼうとしたのに、
自分を心配するソランの傍から、離れたくない。
「ソラン、ごめんね。ソラン、ありがと・・・」
涙を見せれば、怪我をしたソランが慰めの言葉をかけなくてはならなくなる。
だから泣きたくなかったのに。
・・もう。引っ込め、涙!
心の中で自分を罵倒したが、感情は抑えきれない。
唇を噛み締めたまま、閉じた瞼の淵から透明な雫があふれ出した。