【天使の片翼】
ふっと、ソランが笑う気配がした。
景色が歪んで見えないのに、間違いなく自分を笑ったのだと確信がもてる。
「な、なによお!」
「いや、ファラは昔とちっとも変わらないと思って。
ほんと、泣き虫だ」
「誰のせいで泣いてると思ってるのよ」
「僕のせい?それはすごいな。どうせなら、僕の胸で泣いてくれれば最高なんだけど」
痛みに歪んだ顔でソランが両手を広げるのを見て、ファラは泣き声を堪えきれなくなる。
「ばか~!ソランのばか!
自分が怪我したのに、私のあざなんか心配してる場合じゃないんだからぁ~」
ソランの腕にすがりつくような格好で、ファラはわんわんと泣き始めた。
「心配したんだよ。
このまま死んじゃうんじゃないかと思って、本当に心配したんだから~」
「うん」
寝台に頭を伏せて泣いているファラの頭に、ソランはそっと手をのせる。
怪我がなくて良かったという思いと、自分のせいで泣かせてしまったという思い。
そして、自分のために泣いてくれるのだという思いが交差して、
どうしようもなくファラを愛しいと思う。