【天使の片翼】

失礼します、という声がして一人の侍女が部屋に入ってきた。


「ファラ様。ソード様がお見えなのですが、いかがいたしますか?」


声をかけてから、侍女は眠っているファラを見て、少し困ったような顔をした。

ルシルの姿もない。判断に迷っている侍女にソランが助け舟を出した。


「いいよ。入れてくれ」


ソランが目を覚ましているのに驚いた侍女は、目を見開くとすぐに人を呼びに走った。

入れ替わりに、音もなく寝台に人影が近づく。


「良かった。意識が戻ったのか」


ソードは緊張していた頬が緩むのを感じた。


「なんとか。見苦しくてすみません」


体を起こそうとするソランを制すると、ソードは持っていた小さな入れ物をソランに手渡した。


不思議そうに見つめるソランに、ソードはばつの悪そうに顔を背ける。


「これは何です?」


「痛み止めだ。カリプタスから取れたものでとてもよく効く」

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