【天使の片翼】
ソランがなんの反応も見せないことに肩を落として、ソードはつぶやいた。
「やっぱり、僕が信用できないか」
その顔は青白く、生気を失っているような雰囲気を漂わせる。
もとが綺麗な顔立ちをしているせいで、まるでこの世のものとは思われないような印象だ。
「別に自分の命が惜しくて、お前に媚を売るわけじゃない」
「命、ですか?」
物騒な話だ、とソランは思った。
自分が死の淵を彷徨ったことなど、すっかり頭にない風に。
「カナン国とホウト国で戦が始まれば僕は見せしめに殺されるだろう。
人質としての価値がないことは、周知の事実だからな」
ソードの考えがわかって、ソランはなるほどと頷いた。
確かにそれは、一般的な物の見方かもしれない。
けれど、ソランは、はっきりと否定した。
「戦にはなりませんよ」