【天使の片翼】
・・まったく、人の気も知らないで。
怪我の一件以来、ファラはソランたちの休憩部屋にたびたび訪れるようになっていた。
だからといって、急に男女の仲になれるわけでもなく、
それまでと変わらない日常を過ごしていた。
変わったことと言えば、自分の背がさらに伸びたことと、
ファラの髪の毛が伸びて、なんとなく女らしく見えるようになったことくらいだ。
「あ、父様」
城を出ようとしたところで、カルレインに呼び止められた。
ソランはすぐに姿勢をただし、頭を下げる。
それをちらりと見てから、カルレインはファラの両腕に幼子を突っ込んだ。
「え?カリナ?」
唐突に妹を押し付けられ、ファラは戸惑いの声を上げる。
カリナは、まだ1歳に満たず、歩くことができない。
それでもファラの顔がわかるのか、あーあーと声を上げて笑った。
「連れて行け」
「は?」
「連れて行けと言ってるんだ」