【天使の片翼】

月に一度、カナンの城下では定期的に市が開かれる。

農業だけでなく商業の発展も目指そうと、カルレインが王となってから行われるようになったものだ。


もちろんカナンで採れた農作物なども売りに出されるが、

それだけでなく他国の人間が市を出す許可を取ってカナンでは手に入らない珍しい品物を売りに出すのだ。

それを目当てに、国内外から大勢の人間が集まり、市の立つ日の街は一段と活気付いている。


特に何かを買う目的があるわけではなく、好奇心旺盛なファラはこの市にたびたび姿を見せていた。


「もう、カリナってば、また重くなった」


産まれたばかりの時は、壊れそうなくらいに小さかったのに、どうやったらこんなに大きくなるのか。

よろけるファラの隣で、ソランが自然に手を差し出した。


「変わりましょう。ファラ様」


人見知りもせず、カリナは嬉しそうにソランに抱かれて、たくさんの人に目を輝かせる。


「ありがとう、ソラン。

うわっ、これ、素敵ね~!」





< 421 / 477 >

この作品をシェア

pagetop