【天使の片翼】

人ごみを掻き分けるようにして進むと、裏手の路地に出た。


「ファラ!ちょっと待って!」


片腕に抱えたカリナがずり落ちそうになり、ソランはファラにひかれた手を振り払った。


「すみません、カリナ様。大丈夫ですか?」


無理な体勢からカリナを持ち上げると、カリナはきゃっきゃっ、と声を上げる。


「あ、ごめん。カリナ」


ソランからカリナを受け取ると、カリナのもみじのような手がファラの頬をぺたぺたと撫で回す。


愛らしい妹に慰められたのか、少し微笑んでから、ファラは俯いた。


「どうした?」


訊かなくてもシドのことだとわかっているのに、自分の不器用さに笑ってしまう。

無言のファラを横目に、ソランは大通りを見渡した。

自分たちの姿を見失ってしまった警護の兵たちが、顔色を変えて右往左往している。


「持ってるんだっけ?」


「ソードが贈ってくれたのよ」


「ああ」



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