【天使の片翼】

ソランは天を見上げて低くつぶやいた。

思い出したら、なにやら腹の中がむかむかする。

シドのことばかりを敵視していたが、もともとファラの結婚相手になるのはソードのはずだったのだ。

そして、ソードがファラに対して、少なからず好意を持っていることもソランにはわかっていた。


「捨てちまえよ」


「え?」


「ソードからもらったものなんて、捨てればいい」


自分を射抜くように真剣な瞳で見つめるソランに、ファラは胸が騒ぐ。

それは、いつもの穏やかな幼馴染の視線ではなく。


「行くよ」


「え?」


「もう一度、あそこの店に戻るんだ」


「何を言ってるの、ソラン?」


さっきとは反対に、今度はカリナを抱えたファラがソランに腕を取られて歩き始める。


「ソラン?ソランってば!もっとゆっくり歩いて」


聞こえているのかいないのか、ソランは足を緩めることなくまっすぐにあの店へと向かう。

バサニ石の髪飾りが置いてある店へ。



< 425 / 477 >

この作品をシェア

pagetop