【天使の片翼】
ソランは天を見上げて低くつぶやいた。
思い出したら、なにやら腹の中がむかむかする。
シドのことばかりを敵視していたが、もともとファラの結婚相手になるのはソードのはずだったのだ。
そして、ソードがファラに対して、少なからず好意を持っていることもソランにはわかっていた。
「捨てちまえよ」
「え?」
「ソードからもらったものなんて、捨てればいい」
自分を射抜くように真剣な瞳で見つめるソランに、ファラは胸が騒ぐ。
それは、いつもの穏やかな幼馴染の視線ではなく。
「行くよ」
「え?」
「もう一度、あそこの店に戻るんだ」
「何を言ってるの、ソラン?」
さっきとは反対に、今度はカリナを抱えたファラがソランに腕を取られて歩き始める。
「ソラン?ソランってば!もっとゆっくり歩いて」
聞こえているのかいないのか、ソランは足を緩めることなくまっすぐにあの店へと向かう。
バサニ石の髪飾りが置いてある店へ。