【天使の片翼】

商人は、ソランの顔を見ると眉間にしわを寄せた。

ひやかしは、商売の邪魔だ。

しかし、ソランは周囲の人が振り返るほどの大きな声を出して商人を驚かせた。


「これをください!!」


人の波が、一斉にソランを振りかえる。


「おお!さすがだ、旦那。そうこなくっちゃ。

奥さん良かったねぇ。こんないい男と結婚できて」


商人は一瞬驚いたものの、すぐに意味深な笑みを浮かべて、ソランが指差す先にある品物を手渡した。


「ほら、ファラ。つけてみて」


「ちょ、ちょっとソラン。それってすごく高いんじゃ」


「値段なんか関係ない。僕が君にあげるんだ」


ソランの声に立ち止まった野次馬たちは、皆にやにやと二人の様子を見守る。


「で、でも・・・」


戸惑うファラの髪に、ソランは指を絡ませた。


「僕から贈られるのは、いや?」

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