【天使の片翼】
捨てられた子犬のように悲しそうな瞳を見せるソランの表情に、
ファラの胸が、とくん、と小さく波打った。
触れられている髪の毛が、まるで感覚器官のようにひどく熱い。
「い、嫌じゃないけど。でも」
なおも否定の言葉を重ねるファラに、ソランはわかった、と言って彼女から離れた。
わずか一歩の距離がひどく遠くに感じた気がして、ファラはさっきとは違う胸の鼓動を感じる。
受け取るべきだったのだろうか。
けれど、バサニ石の髪飾りなんて相当高価な品に違いない。
ソランの禄を知っているわけではないが、簡単に買える品でないことは確かだ。
ほっとしたような、がっかりしたような妙な気持ちになって、ファラはソランを見つめた。
見守っていた観衆も、なんだ振られたのか、などと口々に好き勝手な暴言を並べる。
と、突然、ソランが胸いっぱいに息を吸い込んで、ファラを見つめたかと思うと、
体全体に溜めていた気持ちを吐き出すように、腹の底から声を上げた。