【天使の片翼】

捨てられた子犬のように悲しそうな瞳を見せるソランの表情に、

ファラの胸が、とくん、と小さく波打った。

触れられている髪の毛が、まるで感覚器官のようにひどく熱い。


「い、嫌じゃないけど。でも」


なおも否定の言葉を重ねるファラに、ソランはわかった、と言って彼女から離れた。


わずか一歩の距離がひどく遠くに感じた気がして、ファラはさっきとは違う胸の鼓動を感じる。

受け取るべきだったのだろうか。

けれど、バサニ石の髪飾りなんて相当高価な品に違いない。

ソランの禄を知っているわけではないが、簡単に買える品でないことは確かだ。


ほっとしたような、がっかりしたような妙な気持ちになって、ファラはソランを見つめた。


見守っていた観衆も、なんだ振られたのか、などと口々に好き勝手な暴言を並べる。


と、突然、ソランが胸いっぱいに息を吸い込んで、ファラを見つめたかと思うと、

体全体に溜めていた気持ちを吐き出すように、腹の底から声を上げた。





< 427 / 477 >

この作品をシェア

pagetop