【天使の片翼】
「まったく、仕方無い方ですね」
馬車の中でいまだカリナを抱いているカルレインに、リリティスの眉がハの字になる。
「なんのことだ」
きゃっと笑うカリナは、カルレインの髪の毛がお気に入りのようだ。
何度も引っ張っては、声をたてる。
「娘の幸せを邪魔するおつもりですか?」
「ふん。親に反対されたくらいでめげるようならファラを幸せになんかできるか」
「あなた」
強くはなかったが、非難の色が感じ取れる。
カルレインは窓の外へと視線をずらした。
人々を包み込むような色をした太陽の下に、整備された街並みが流れていく。
ところどころに木々が植えられ、安定した生活が垣間見える。
彼が王として国を改革し、民を富ませた成果の一つだ。
向かい合って座っていたリリティスが、いつの間にか自分の隣へと移動する。
彼女が傍に来たとたん、カリナはリリティスに抱っこをせがんだ。