【天使の片翼】

「ところで、少しお尋ねしてもいいでしょうか」


カリナのまだ生え揃わない柔らかな黒髪を撫でるリリティスは、


「どうしてファラをホウトへやったのですか?」


カルレインの返事を待たずに、問うてきた。


別にわざわざファラである必要はなかったはずだ。

一番上の娘は、いまだ結婚をせずに一緒に住んでいる。

確かにソードの年齢を考えればファラが適当であった気もするが、政略結婚という意味合いにおいては、あまり関係がないだろう。


それは、一番初めからリリティスが感じていた疑問だった。


「俺の本当の娘ではないからだ」


突然、心が冷えるような言葉が飛んできたせいでリリティスは短く息をのんだ。

が、彼女の凍りついた顔を見てカルレインはすぐに訂正した。


「おい、誤解するな。そういう意味ではない」


「では、どういう意味なのです!」


言葉の通り解釈すれば、血の繋がった娘をやるのは嫌だった、ということになる。

リリティスのしわ一つない顔が、雲って歪んだ。


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