【天使の片翼】
「お初にお目にかかります。ホウト国王ルビド様。
カナン国、第二王女のファラと申します」
・・やれば出来るんだから、最後まで猫をかぶっててくれよ。
ファラの後ろから、緊張した面持ちで、ソランが見守る。
ファラの分も、全て引き受けたような表情の硬さだ。
ファラが深々とお辞儀をすると、ホウト国王は、柔和な笑顔を向けて、頷いた。
「ようこそ、いらっしゃった。長旅で大変だったろう」
年のころは、60ほどだろうか。
しわを刻んだ顔は、威厳のある王というよりは、優しそうなおじいちゃん、といった雰囲気だ。
「まずは、あなたの夫候補を紹介しておこう。
ソード。こちらへ来なさい」
その声に反応して、一人の少年が、前へ進み出た。
気楽に構えていたファラも、さすがに、胸が高鳴る。
頭を下げたままのファラの視界に、足先が入った。
これが、自分の夫となる男の、つま先。
ずいぶんと、小さいような・・・。