【天使の片翼】
ご案内します、と言っていた割には、ファラを気遣うことなく、
無言のまま、早足で歩くソード。
「あ、待ってください。ソード様」
その背中を追いかけるようにして、ソードに並ぶと、
ピタリと歩みを止めたソードが、にっこりと、満面の笑顔で笑んだ。
人形のような、かわいらしいその笑顔。
無垢というのは、多分、こういう王子の事を言うのだろうと、
ファラはその笑顔に見惚れて、感心した。
笑みを崩さず、
先ほどと同じかすれた声が、
先ほどと同じ愛らしい唇を通して、
別の言葉を発した。
「おい、お前。
慣れ慣れしく、僕の名前を呼ぶな。
僕は、女なんて、大嫌いだ。
仕方ないから、みんなの前では、お前が恥をかかぬように一芝居うってやる。
いいか、僕の機嫌を損ねるなよ」