【天使の片翼】
強い日差しが薄布を通して、飾られた花の形に、影をかたどる。
本当に、なんて白い肌なのでしょう、などといいながら、
何人もの侍女たちが、ファラの体に衣をあて、髪を梳いていた。
ファラがホウトに来てから、すでに7日。
毎朝恒例行事のように、ファラの姿が、腕自慢の侍女の手によって、美しく着飾られる。
自分で出来るから、と、何度言っても、だめだ。
カナンでは、できることは全て自分でやるようにしつけられた。
着ることも、食べることも、
時には、身を守ることも。
しかし、ここでは、そうはいかないらしい。
“本物の”お姫様のような、下にも置かぬ扱いを受けている。
もちろん、理由は、第九王子の花嫁候補だから、なのだが。
・・あの腹黒王子、ちっとも私と仲良くする気がないのよね。
最初に挨拶を交わして以来、ただの一度も顔を合わせていない。