【天使の片翼】
日が射す角度が大きくなり、気温もそうとうに上がっているのだろうが、
乾燥しているせいだろうか。
日陰にいれば、さほど暑くは感じない。
レリーの案内のもと、ファラは、しずしずと、廊下をすべるように音もなく進んだ。
ソランの刺すような視線を、背中に感じながら。
・・もう!
見張ってなくても、ちゃんとお姫様として振舞うから!
何度か振り返って、離れるように目で訴えても、ソランは知らんふりだ。
てっきり、兵士たちとともに、カナンへと帰るのだろうと思っていたのに、
なぜか、ソラン一人だけは、ホウト国へ残った。
しかも、四六時中自分に付きまとい、目を光らせている。
まるで、うるさい小姑のようだ。
ファラは、ふと空を見上げて、掌を額にかざした。
二羽の小鳥たちが、仲良く空を泳いでいく。
ファラは、胸の中で、ため息をついた。