【天使の片翼】
普段、ソードが、剣の稽古をしているという広場に近づくにつれ、
鈍い音が、だんだんと大きく耳元へ届く。
ファラには、それが剣の交わる音であることが、すぐにわかった。
手前にいる背を向けた男が、指導している者なのだろう。
ソードは、こちら側に顔を向けて、相手に切り込んでいく。
ファラの姿に気づき、ソードはいったんは無視しようとしたようだが。
「ごきげんよう!ソード様」
有無を言わせぬファラの大声に、動きを止めてこちらを見た。
・・周りに人がいる以上、無視はできないわよね。
ファラの読みどおり、ソードは、こちらに近づいて、彼女の手を取った。
「・・こんにちは、ファラ王女。
今日も、素晴らしく美しいですね」
ファラの手の甲に、当たり前のように優雅に口付けてくる。