溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
「あっ! あったよ
あそこみたい」

私は今、見つけたようなふりをして走り出した

紅夜さんの腕は、私の身体に触れずに空振りした

ごめんなさい

今は…ちょっと無理

紅夜さんが嫌いじゃないの

でも、怖い

綾さんが怖い

どうしていいかわからない

不安で、胸が押しつぶされそう

だからって紅夜さんに想いをぶつけても、お互いに苦しくなるだけだと思うから

綾さんと関係を切りたくても、切れない場所に紅夜さんはいるでしょ?

迷惑かけたくないの

私のせいで、苦しい思いをして欲しくないの

だから…私の気持ちが落ち着くまで、待っていてください

お願いっ

「あったよ、ここみたい」

私は病室の前で足を止めると、ネームプレートを人差し指でさした

「ああ」

紅夜さんの声が、低くなった

なんで、そんなに不機嫌な声を出すの?

紅夜さんは部屋の前に足を止めるけど、ドアを開けようとはしなかった

「入らないの?」

紅夜さんの目が、私を見る

すごく怖い顔をしてる

「その前に……俺を避けてるだろ?」

「え?」

バレてる…よ

私は何も知らないふりをして首をかしげた

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