溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
「溜めるなって言ってるだろ?
口に出して、言えよ」

紅夜さんが、優しく微笑んだ

「紅夜さんは綾さんを好きなんでしょ?
なかなか忘れられなくて…いろんな女性と…その…」

「それは、もう過去の話だろ
俺は今、愛実と付き合ってるんだぞ?
俺の恋人は、愛実だ
今、愛実が俺の前から去ったら、もう立ち直れないと思う
綾のときより、自暴自棄になる
だから勝手に、俺との関係に終止符を打つなよ」

「それって脅し?」

紅夜さんが、噴き出した

「そうだな、脅しだな
脅しておけば、勝手にいなくならないだろ?」

紅夜さんはまた私の指先にキスと落とした

『ちゅ』と音が鳴る

「っごほん」

横から、わざとらしい咳払いが聞こえてくる

私と紅夜さんが、咳が聞こえてきたほうに視線を動かした

そこには私服姿の朱音ちゃんが足を広げて立っていた

「朱音ちゃん?」

私は、紅夜さんの手の中にある自分の手を引き抜くと、慌てて立ち上がった

「んだよ、邪魔すんなよ」

紅夜さんがゆっくりと立ち上がると、私の腰に手を回そうとする…が、私は朱音ちゃんに向って走り出した

「どうしたの?」

私は朱音ちゃんに抱きつく

朱音ちゃんは私の背中を撫でてから、頭をポンポンと叩いた

「お姉ちゃんからメールがあったから・・・来てみた
病院の廊下で、エッチ寸前のカップルがいるとは思わなかったけどっ」

「朱音がいなければ、俺達、良い雰囲気だったのになあ」

紅夜さんは白々しい声をあげた

え? 紅夜さん、何を言うの!

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