溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
つい、足がもつれるって?

お父さんは、恥ずかしそうに笑いながら散らばった荷物をかき集めた

なんか…どんどんと紅夜さんのお父さんのイメージが崩れていくんだけど…

厳しくて、怖くて、隙のない人から

おっちょこちょいで、優しくて、隙のあり過ぎる人へと変換されていくよ

この人が、紅夜さんと付き合っていた綾さんを奪ったの?

なんか…ちょっと、想像ができないんですけど

私のイメージが貧困なのかな?

「あの…質問してもいいですか?」

「ええ、どうぞ」

重たい荷物を持ち上げると、お父さんが笑顔で答えてくれた

「綾さんが四人目の奥様だと聞きました
離婚したら、もう…子供たちには母親に合わせないって聞いたんですけど」

「ああ…それは、紅夜から聞いたんでしょ?
ええ、紅夜の前ではそう言ってます
紅夜の母の話は聞きました?
男と浮気して、出て行ってしまって…お恥ずかしいお話し、彼女は子どもに愛情を全く示さない人でね
若くて格好の良い男に夢中で、家を出るなり音信不通になってしまって
調べて居場所を掴んだら、『子どもはあげるから、私の子だって言わないで頂戴』なんて
これじゃ、紅夜がいくら母に会いたくても会わせづらいでしょ?
だから子どもたちの前では、母に会うなって言ってるんです
紅夜にはダメで、他の娘二人は母と会いたい放題なんて…可哀想でしょ?」

二階と三階の間で、お父さんは足を止めると、荒くなる呼吸を整えた

「す、すみませんね
どうも体力がすっかり落ちてしまって…息切れがっ」

「はあ」

私は肩で息をして、つらそうにしている紅夜さんのお父さんを眺めた

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