溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
家の近くで、車を停めてくれた紅夜さんが、寂しそうな顔をして私の手を握りしめてくれた

「悪い。俺、この手を離したくない。もっと愛実と一緒にいたいよ」

「うん、私も。だけど家にも帰らないと…母親が気にしちゃうから。義理のお母さんなんだけど、すごく心配性で、私が帰ってこないのは、自分を嫌ってるんじゃないかって…悩んじゃうみたいで…」

「俺の我が儘なのはわかってるんだ」

紅夜さんが苦笑して、肩をすくませた

車の横を通った人が、助手席側の窓から顔をのぞかせると窓を叩いてきた

え?

私は横を向くと、大きな旅行カバンを持っているお姉ちゃんだった

あ…お姉ちゃん?

私はお姉ちゃんに笑顔を見せるが、お姉ちゃんは運転席の紅夜さんを見て、顔を曇らせた

「何やってんの! あんたっ」

お姉ちゃんが窓を息で曇らせた

怖い顔をして、あたしの顔を見てくる

「愛果?」

紅夜さんの低い声が背中に突き刺さる

そうだ! 紅夜さんとお姉ちゃんは、付き合ってた

一年前まで付き合って、私が告白したことで別れたんだ

ショックで、お姉ちゃんは違う人と結婚をした…私のせいで、お姉ちゃんはお父さんの取引先の人と入籍したんだ

「めぐ…すぐに車を降りて!」

車の窓をどんどんとお姉ちゃんが叩いてくる

私は紅夜さんの顔を見た

紅夜さんは、ぎこちない笑みで私を見ている

「行ったほうがいいよ。愛果が怒ってる」

「ごめん」

謝った私に、紅夜さんが首を横に振った

「いや、俺のせいだよ」

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