溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
私は車を降りて、紅夜さんにさびしく頬笑みかける

紅夜さんは気まずそうに片手をあげてくれた

「帰るわよ」

お姉ちゃんが、私より先に紅夜さんの車のドアを閉めると、私の腕を掴んですたすたと歩き出した

「お…お姉ちゃん、ちょっと待ってよ」

「めぐ、なんであんなヤツの車に乗っているのよ。あいつがどういう人間か知っているはずでしょ?」

お姉ちゃんがぐいぐいと私の腕を引っ張っているなか、紅夜さんの車が通り過ぎて行った

紅夜さんの車が、路地で曲がると、お姉ちゃんが足をとめた

「どういうこと?」

「4月に再会して…。同部屋の子のお兄さんだったの。友達の荷物を持って部屋に入ってきたのが紅夜さんで。だから、その」

「そのまま付き合っちゃったわけ?」

「……うん」

いろいろあったけど、と言いたいけれど、どういえばお姉ちゃんに納得してもらえるのだろうと考えると、言葉が喉で引っかかった

「あいつは、本気になんてならない。傷つくのはめぐのほうなのよ」

「うん」

でも今は、真剣に付き合おうとしてくれてるよ?

「私を見てきているわよね? あいつを好きになっても、結婚するのは別の人間なの」

「綾さんでしょ? 紅夜さんが好きな人って。ちゃんと紅夜さんから聞いてるよ」

「は? あいつが正直にそう言ったの?」

「うん、言った。私、綾さんにも会った」

「何それ…堂々と浮気な相手と認められたってわけ?」

「違う。そうじゃなくて。なかなか忘れられない人がいるけど、ちゃんと向き合うからって言ってくれた」

お姉ちゃんは怖い顔をして、私を睨みつけた

「紅夜が? そんなことを言う男じゃないわ」

< 159 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop