溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
「わざと…だったんですね」
私は正座をして、紅夜さんの目を見つめた
「わざと以外に何があるんだよ」
「それが紅夜さんにとっての普通だと思いましたから
重くて真面目なのが嫌いだって言ってたから
自由に行動できる恋愛なら、付き合えるのだと思ってました」
「そういうのが重たいって言うんだよ」
紅夜さんがさらさらの前髪をかき上げた
「俺に気を使ってるつもりなんだろ?
何も言わないことが、正解だと思ってる
自分一人だけが我慢してるのが、俺にとっていいことだと言わんばかりに
悲しげな目をして、俺を見て……視線で俺を責めるんだ」
紅夜さんは手に持っていた携帯を枕元に投げた
「紅夜さん、誰のことを言ってるんですか?」
私の質問に紅夜さんの体がびくっと動いた
はっと目を開けたと思うと、喉を鳴らして私から視線をそらす
「『綾さん』って人ですか?」
紅夜さんの体がまたびくっと微かに動いた
「知らねえな」
低い声で言うけど、ひどく動揺しているみたい
紅夜さんの視線が宙を彷徨っていた
「そうですか」
「…あんた、何を知ってるんだ?」
紅夜さんの視線が私に向いた
まるで捨てられた子犬のような瞳をしている
今まで、見たことのなような紅夜さんの瞳だ
こんな寂しい目をした紅夜さんを私は見たことがない