溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
紅夜さんは綾さんの目を合わせようとしなかった

顔をそむけて、唇に力が入っているように見える

「でも…せっかく作ったから
紅夜の好きな……」

「いらねんだよ!」

不機嫌な声で、紅夜さんが言葉を吐き出した

好きな人なんでしょ?

なんでそんなに苛ついているの?

好きな人の料理なんだから、素直に受け取ればいいのに

どうして拒むのだろう

「あ…ごめんなさいっ
彼女が…いたんだ
気付かなくて…女性は家にあげないって前から言ってから」

私の存在に気がついた綾さんが、慌ててお弁当を持っている手を引っ込めた

私は立ち上がって、学生鞄を手に取ると玄関に向かった

「あ、違うんです
朱音ちゃんにお願いして、勉強を教えてもらっていたんです
私こそ、申し訳ありません
失礼します」

私は玄関にある靴を履いた

「おいっ!」

紅夜さんの手が私の手首に触れた

とっさに私は手を引っ込めた

ダメっ

好きな人なんでしょ?

そんなことしたら、誤解されちゃうでしょ?

せっかく家に訪ねて来てくれたんだから…この機会を大切にしてください

私は紅夜さんの手をすり抜けると、外に飛び出した


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