溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
私は紅夜さんに身体を支えてもらいながら、歩いた

アパートに戻ってくると、綾さんの姿がなかった

帰ったのかな?

本当に帰っちゃったの?

紅夜さんが部屋のドアを開けると、玄関に座り込んでいる綾さんがいた

紅夜さんの姿を目にした綾さんは立ち上がると、可愛らしい笑顔を浮かべた

「何?」

紅夜さんが不機嫌な声になる

「鍵もかけずに飛び出して行ったから…」

「お留守番でもしてくれてたわけ?
帰れって言っただろ」

「そうだけど、不用心でしょ?」

「盗られるもんなんて、ねえよ」

「そうじゃなくて…」

「じゃあ、何だよ!」

紅夜さんは声を荒げた

綾さんの体がびくっとなる

少しおびえているようだ

「紅夜…どうしたの?
前はこんなんじゃなかった」

紅夜さんが鼻で笑う

「『前』? 『前』って何?
俺に何を期待してんの?」

「あの…私、やっぱり帰り…」

私は紅夜さんから離れようとする

でも紅夜さんの手が、私の体を離そうとしなかった

むしろさっきよりも強く私の肩を抱いていた

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