溺れる愛☆零れ堕ちる恋心
『紅夜兄っ! 連絡しようと思ってたんだよぉ
愛実ちゃんが帰ってこないんだけど、どこにいるか知ってる?
夜には帰ってくるって言ってたから…
紅夜兄は夜から用事があるんでしょ?
もう愛実ちゃんとは別れたの?』

静かな部屋に、朱音ちゃんの声が漏れてきた

紅夜さんは口を開きかけたまま、動きを停止していた

話したくても、マシンガンのように朱音ちゃんが話しているので口をはさめないのだろうか?

『何時くらいに別れたの?
なんでちゃんと寮まで送らなかったのよ!
愛実ちゃんに何かあったら、紅夜兄のせいだからね』

「言いたいことは終わったか?」

紅夜さんがやっと声を出せた

『何それ?
ちょっと…』

「いいから俺の話しを聞け!
まだ一緒にいるんだ
明日送っていくから…」

『ええ?
そうなの? 紅夜兄と一緒なの?』

「だからそうだって言っただろ」

『ふうん、そう…わかった
ちゃんと寮まで送ってよ』

「ああ、わかってるよ」

紅夜さんは携帯を耳から離すと、電話を切った

白い携帯をテーブルの上に置いた

「あの? こっちの携帯のデータ…なんですけど」

「ああ?」

紅夜さんが割れた携帯に目をやった

「本当にデータがないんですか?」

< 54 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop