あの日の奇跡
友達。
「今日も元気にがんばろう!」

よぼよぼの校長の無理矢理なしめくくりで、入学式は幕を閉じた。

生徒はぞろぞろと列をなし、それぞれの教室に入っていく。
皆、横顔は期待と不安でいっぱいだ。


私は遅刻してきたので、まだクラス表を見ていない。
なので一人列を抜け出し、クラス表がはってある、アトリウムに走った。

クラス表~
高1のは…
あった!!

佐々木…
佐々木…

あ、4組だ。
担任、大沼和彦…?
鈴木先生じゃないんだぁ、残念。

「あの、すいません」

「はい?」

突然、背後から声をかけられた。振り返ると、驚くほどの美女が立っていた。

「あなた、何組だった??」

このこも遅刻してきたのかな?

「4組でした。あなたは?」

「一緒~!ねぇ、クラスまで一緒に行かない?」

美女は、クールな顔付きとは裏腹にくしゃっと顔をくずす無邪気な笑顔を見せた。
見る人を引き付けるような笑顔だ

「私の名前は、宝泉寺麗子。あなたの名前は?」

「私は、佐々木華恋。かれんってよんで!」

「私はれいこで。よろしくね、かれん」

そう言って、差し出された手を私は笑顔で握り返した。
手までもがすべすべで、温もりが心地好い、繊細さを感じる手だった。
入学初日から、こんな美人な友達ができるなんて、ラッキーだ、なんて思っていた。

れいこ。
この高校でできた初めての友達だった…。
< 10 / 22 >

この作品をシェア

pagetop