あの日の奇跡
「佐々木さんは、今日遅刻ですか。」

「はい、寝坊してしまって」

「次からは気をつけましょう」
「はい…」

そこで会話は途絶えてしまっただけど、鈴木先生との沈黙は
なんだか心地が好い。
何でだろう。
爽やかな、春の陽気のせいかな…


「佐々木さん、下の名前は?」
先生が突然、沈黙をやぶった

「華恋です。」

「素敵な名前ですね」

「いえ…。先生の下の名前は?」

「まなとです。」

「そうですか」


再び、沈黙がもどる。
そのあと、少しの会話といくつかの沈黙を過ごし、私達は体育館に着いた

私は入学式の列の最後尾につき、校長の長い話を聞き流し、
先生のこと、これから始まる高校生活を想像し、期待に胸を膨らませた。
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