飛べないカラスたち
友人を訪ねるほど、交友関係はそんなに広くはなかったし、人一人を生活させるなんていう大変な労力を他人の大人にこれ以上強制させるわけにも行かないとも思っていた。
かといって、手元にあるのはせいぜい二週間安いホテルに泊まれたらいいくらいの金額しかない。
ホテルに泊まればとりあえずは寝床を確保できるが、それは一時的に凌ぐだけで問題解決にならないお金の使用方法であることを、レイヴンは冷静に考えて途方にくれていた。
ホテルに泊まって一晩案を練ったとしても、何も出てこないことが明白だったのである。
父親とは、あれから連絡が取れなくなってしまった。
いつもそうだ。
父親はどこか自分の考えたとおりに猛進していくタイプで、後先を考えない。よく言えば情熱的、悪く言えば考え無し。
勿論計画性もないので、すぐに雲行きは悪くなる。
そんなときはお金の力を借りたり、逃げたりしてその場をしのぎ、また猛進するのである。
怒りよりも先に、溜息が出て、レイヴンはとりあえず人工森林公園で一休憩をした。
空を見上げるとガラスによって歪まされた空が見える。
歪まされたと言っても、この空をとてつもなく広いガラスが覆っているので、歪んでいたとしてもわからない。
この世界の人間はもう、純粋な空を見ることが出来なくなっているのだから、歪んでいたとしてもそれが正常だと思い込んで生きているはずだ。
歪も、連なり、常となれば、異常ではなく正常となる。
一時期でもレイヴンが本妻の元で家族同然の顔をして生活していた時のように。