飛べないカラスたち
生まれた時から歪な空なので、この空に疑問を抱いたことはなかったが、このガラスを破った向こう側の空はどんな空なのだろうかと、そんなことをぼんやりと考えた。
関係のないことを考えておかなければ、思考がショートしてしまうと思ったのである。
何処までも大人びたレイヴンだが、実際はまだ15歳。
中学を漸く卒業したレイヴンの生き延びる知恵など、周りの子供たちとなんら変わりない、大人任せの知恵しかなかったのだ。
全ての土地は所有地なので勝手に居付けば追い出される。
そうして保護者に連絡を取ってもらえればいいが、父親はまた放り出すだろう。育児放棄と言うものだ。
それが法律で禁じられているとはいえ、警察に届けて自分を保護してもらおうと思わなかったのは、父親の元も自分の居場所ではないと思っていたからである。
どちらかと言えば父親の本妻とその息子と過ごしていたあの場所が一番自分の居場所に近かったような気がする。
騙していたことは少し胸を痛ませたが、それでも、義弟のカインと一緒に過ごしているときはとても楽しかったし、幸せだった。
母親が死んだその悲しさはすぐには拭えなかったが、カインの笑顔にはいつも癒されていた。
購買で、一番安いパンと水を買い、胃袋を満たしながら段々と傾き、長くなっていく影をボウッと眺める。
夜になれば、少し冷えてくる。
それまでにどこか雨風を凌げる場所に行かなければならない。