飛べないカラスたち




ふと、レイヴンの頭の中を一人の人物との記憶が過ぎった。


レイヴンがまだ小学生くらいの時に何度か訪れた母親の実家。そこには夫を亡くした老婆がにこやかにレイヴンを迎えてくれていた。


母親と同じで優しい笑顔が印象的な、料理のうまい、レイヴンの祖母。


駅の名前はなんとなく覚えている。駅からの道も変わってさえいなければたどり着けるだろう。


唯一レイヴンが頼れる相手と言うのはその人しかいない。


ただ、小学校を卒業する前から会う機会がなくなり、母親の葬式にも祖母は姿を見せなかったので、少しだけ憚られたが、一日だけでも雨風が凌げ、大人の知恵でどうにかこれからの生活を一緒に考えてもらえれば十分だった。


レイヴンは掠れた記憶を頼りに、祖母の家へと向かった。


その家は、都心部からずいぶんと離れた田舎町で、カインたちと過ごしていた家から電車で二時間ほど離れ、バスで四十五分ほど進んだ場所だった。








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