飛べないカラスたち
*



無駄足ではなかったが、レイヴンは途方に暮れて、何故か見知らぬ赤の他人の家にお邪魔することになっていた。



「そっかー…こう言っちゃなんだけど、無責任なところあったもんね、……えっと…」



「レイです」



「そうそう!レイ君のお父さん。…あんまりレイ君を連れてこなかっただろ?おばあちゃん毎日寂しそうにしてたんだよ」



はい、とお茶を出されて、レイヴンはお礼を言って受け取る。


レイヴンはこの、少しふくよかで気さくな老婆に、祖母の家の前で立ち尽くしているところを発見された。


彼女から、聞いた事実。祖母は、随分と前に死んでいたのである。


自分の現状よりもその話を聞かされたときに葬式に出れなかったことに、レイヴンはショックを受けた。


死んだのはレイヴンの母親が亡くなってすぐだったと知り、教えてくれなかった父親を少しだけ不満に思いながら、老婆の話に相槌を打ち、自分の知らない他者の記憶を共有した。


母親が亡くなる前から、意識がなくなって植物人間になってしまっていた、祖母。


悔やまれる、あまりにも無知だった自分。


声を掛けてくれた老婆と言うのはレイヴンの祖母とは学生時代からの親友だったそうで、事情を話すレイヴンに住ませることは出来ないが、数日くらいなら泊まっていくといい、と家に招き入れてくれた。


とりあえず、今日の寝床は確保できたが、不安定な綱の上であることに変わりはない。


祖母の事情も知り、唯一頼りにしていた大人がいなくなって、レイヴンはまた途方に暮れる。


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