飛べないカラスたち
頼み込めばこの老婆の家に居つくことも出来たろうが、年金生活の老婆にそんな無茶をさせるわけにも行かなかった。
レイヴンは一日でこれからの自分の道を決めて、明日には出て行こうと思っていた。
お茶をすすり、一息ついたところで老婆の料理の手伝いをしながら他の行く宛を今まで生きてきた中での記憶を頼りに探したが、十数年の少年が思いつく宛など、皆無と言っていい。
老婆と一緒に食事を取りながら、亡き祖母へと思いを寄せ、同時に振り出しに戻った自分がこれからどうするべきかを考えあぐね、レイヴンは一人溜息を付いた。
「不憫だねぇ……私が育ててあげれればいいんだけど…こんな老いぼれじゃあ…」
「とんでもないです。今日、泊めてもらえるだけでとても助かりました」
「代わりといっちゃあなんだけどね、あの山の麓に大きな建物が見えるだろう?あそこは教会でね、もしかしたらレイ君を受け入れてくれるかもしれないよ。あそこには誰も叶えられない願いを叶えてくれる方がおられるって話しだし、行く当てのない人を住ませる為に寄宿舎を建てたらしいしねぇ」
言われて指差された、窓の外、その奥にある大きな建物を眺める。