飛べないカラスたち
それは大きな教会の隣に学校や病院と言えそうなほどの建物まで有している土地で、その周辺、随分とはなれたこの老婆の家からでもその威光は窺えた。
孤児院のようなところだろうか、とレイヴンは暫く教会を眺めて、視線を老婆に向ける。
特にキリスト教を信仰しているわけでもない老婆が言う言葉なら、なんとなく信用できるような気がしていた。
まだお金も、教会へ行く程度くらいならある。
ホテル代へ当てるよりは無駄足でもまだマシだろうと、レイヴンは明日教会へ行ってみることを老婆に伝えた。
その日、レイヴンは外が暗くなるに連れて、カインのことを思い返していた。
夜になっても帰ってこないレイヴンを心配して、外をうろついてはいないだろうか。
母親を問い詰めて怒られてはいないだろうか。
連絡が出来たら良いが、カインが電話に出る確率が低すぎるので、電話をすることさえも憚られる。
そう考えるとうまく眠ることも出来ず、何度も寝返りを打っては、溜息をついて、そしていつの間にか長旅の疲れのお陰もあり、夢の世界へと落ちていった。
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