飛べないカラスたち



レイヴンは優しくルックの頭を撫でると、すぐに手を離して隣室のクロウを起こしに行く。


小さく咳払いをした後、先ほどよりも声色を低くして、少し強い口調で言い放った。



「クロウ君、選考会会長の質問への答えは?」



「――――ッ!!」



ビクッと膨らみが跳ね、同時に布団が宙を舞い、クロウがその言葉どおり飛び起きた。


驚きと困惑と焦りの表情のクロウに対して、レイヴンは起き上がったクロウへひどく穏やかに微笑んで見せた。



「おはよう御座います、クロウ」



一瞬の間をおいて、ここが自分の家で、レイヴンがいて、部屋が異様に明るいと言う状況で全てを察したクロウは、ルックと同じく諦めを抱くと飛んだ布団を掴んでまた横になる。


折角の快眠を、最悪な形で奪われたクロウは不愉快丸出しでレイヴンへと悪態をもらした。



「ざけんなよ悪趣味ドS野郎!」



「おや、ヒドイですね。選考会に出席して、次のターゲットの資料を持ってきてあげたというのに」



「起こし方が悪趣味だっつってんだよ。あーちくしょー、後もう少しで新型のバイクがタダでもらえたのにー……」



「それは残念でしたねぇ。…でも所詮は夢なんですから。さ、早く起きてください」



ちっとも残念そうに思っていない様子で悪びれなく微笑んでいる、このレイヴンこそ、この第三地区の『カラス』の筆頭であり22歳の最年長。そしてルックの腹違いの兄である。



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