飛べないカラスたち
「私たちの仕事の受け止め方は人それぞれです。仕事も、…司教が出て行ったでしょう?あれは過激派を殺しに行ったのですよ。そんな仕事もあれば、私のように医療機関で受け入れきれない方々の痛みを断ち切ることも仕事に入りますが…。私たちは人助けだと思って行なっています。いつか私たちの仕事がなくなる日を願いながらね……さぁ、見ていたでしょう?簡単です、心臓に…」
長刀を木の板の隙間に突き刺して、言った。
「出来ません、そんな…」
「あなたにしか出来ないことです。決して自分のためにあらず、他者のために……もう、私は疲れました。眠らせてはくれませんか…?悲しみを抱く必要はないのですよ、死とは悲しむほどのものではないのですから」
だとしても、人の命を奪うことなど、レイヴンに出来るようなことではない。
わかりました、といって人を殺せるような人間ならばそもそも教会にたどり着いてなどいないのだから。
「見たでしょう?皆の幸せな顔…。死とはね、嫌われがちですが最終的な救いの場所なのですよ。見えないだけで、私はもう傷だらけだ。どうか、助けてはくれませんか」
「それが、…大主教様の願いなのですか…?」
「えぇ……仲間には申し訳ないですが、お先に…」
長刀の刃が嫌に眩しい。
そこに映るレイヴンは頬を濡らしたまま、うつろな目をしていた。
あぁ、そうだ、と大主教は思い出したように呟いた。
「弟さんに、ちゃんと電話をしてくださいね。きっとあなたを待っているでしょうし、あなたの大切な弟さんならきっとあなたをわかってくれるでしょう。あなたの世界に幸あらんことを…」
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