飛べないカラスたち
*



槍など手にしたことのなかったレイヴンは、朝から晩まで槍の稽古をしていた。


大主教の穴は、神官の中から選ばれた。


司教は、大主教になることを断り、レイヴンの稽古をつけることに専念した。


年老いているとはいえ、現役『カラス』の名は伊達ではない。


大きな斧を振り回し、細身のレイヴンはしばしば吹き飛ばされることになる。その度にはっはっと高笑いが響く。



「レイ、早く引退させてくれよ」



「今まで運動をしなかった付けが回ってきたようですね…」



肩で息をするレイヴンは『レイヴン』の名と槍を与えられ、正式的に『カラス』となった。


司教は大主教しか『レイヴン』と呼びたくないと言い、レイヴンのことをまだレイと呼んだ。それでも別に構わないのだが。



「弟に電話はしたのか」



「えぇ、今日の夕方ごろにこっちに来るとのことです」



「『カラス』のことは?」



レイヴンは少し困ったように首を横に振った。


『カラス』になったと知ったらカインはどう思うだろう。


世間では人殺し集団、などと呼ばれているその存在の一人になったと知ったら、引き止めるだろうか。


それでも、コレはレイヴンが自分で決めたことだ。





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