飛べないカラスたち
助けられる力が欲しい。
助けるためにはあらゆる力がなければ、いけない。
地位も権力も、そして、力も。
それさえあれば、傷つかなくていい人が増えるはずだと、信じていた。
自分が罪もない人を傷つけることもなくなるだろう。
カインに電話をしたのはカインの現状を知りたかったのもあったし、最後に会っておこうと思ったのである。
「じゃあ訓練服では困るだろう。ちゃんと法衣を着て待っておけ。今日はこのくらいで終わろう」
司教に礼を述べると、司教はその皺くちゃの顔に笑みを作り、『これから仕事だ』とだけ言って、訓練室から出て行った。
レイヴンはその背を見送って部屋へと戻るとシャワーを浴び、法衣に着替えて、少し緊張しながらカインが来るまでの時間をソワソワと過ごした。
カインに別れを告げて、『カラス』として闇にまぎれて生きていく。
教会には時たま顔を出そう。
助けを求める人には、手を差し伸べよう。
だけど決して人と深い関係を作ってはいけない。友情などは、手をかけるときに、酷く痛むから。
どこかマンションを貸してもらって、そこで一人暮らそう。
そんなことを考えながら青銅の門に一番近いベンチで、座りながら自分が育てていた花を眺めながらカインを待った。
しかし、カインは夜になっても現れず、次の日にも、現れなかった。
電話は繋がらない。
司教に話して数年ぶりに義母とカインが住んでいた、かつて自分も住んでいた家を訪れると、その家は黒い炭と化し、子供は死んだと伝えられた。
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