飛べないカラスたち
*




ピンポーン



ルックの寝息しか聞こえなかった室内にそんな電子音が響いたのは最後の一人が削除されてから随分と時間が過ぎた頃だった。


レイヴンはキッチンに掛けられたモニターを見て、ドア前に立っている人物を確認する。


そこにはジャックドーと、その肩を借りて俯いたままのクロウが立っていて、レイヴンは急いで扉を開けた。



「ジャックドー、クロウ!どうしたんですか二人とも…」



その言葉には単独行動をしていた二人が一緒にいる不可思議さと、俯いたまま微動だにしないクロウと、最後の一人が削除されて随分と時間が掛かったことを全て指していた。


ジャックドーもクロウも、それぞれバイクシューズとバイクという移動手段を持っていたはず。


割り当てられた担当場所からこのマンションまでは2・30分もあればたどり着けたはずだったのに。


ジャックドーはとりあえずクロウをレイヴンに託してドアを閉める。


レイヴンもクロウをベッドまで連れて行ったが、クロウは気を失っているらしく、いっこうに目を覚ます気配がない。



「ルック、起きてください!」



急に起こされたルックは目を擦りながら、今の現状把握に暫くの間を必要とした。


今が何時で自分が眠ってどれくらい経って、何故レイヴンが慌てているのか。


とはいえ、レイヴンも現状を把握出来ていないのでルックと同じく何かあったのか、という表情しか出来ない。


知っていて今話が出来るのはジャックドーただ一人だ。



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