飛べないカラスたち



「クロウ、大丈夫ですか…?」



「あぁ…悪い、一日寝ちまったな。叩き起こしてくれてよかったのによ」



「すみません…」



その言葉が自分を叩き起こさなかったことではなく、別のニュアンスを含んでいることを敏感に感じ取れば、クロウは微かに笑って、レイヴンの額を拳で小突いた。


少し遅れてジャックドーが姿を見せ、ルックに手を貸しながらゆっくりとクロウの傍に歩み寄る。


まるで病院の面会だ、とクロウが照れたように頬を掻く。



「すなまいクロウ、…まだ痛むか?」



「いや、大丈夫だ。悪いな、迷惑かけた……ちょっと寝て落ち着いたから、もう心配すんな。…お前もな」



わしゃわしゃとルックの頭を撫でて、少し力なさげに、それでもいつものように笑うとクロウはベッドから降りて風呂場へと向かった。


とりあえずは平気そうで三人は胸を撫で下ろす。


ルックに関しては皆に見えないように袖で目元を擦っている。


そんなルックの頭を優しく撫でながら、レイヴンは朝ごはんの準備を始めた。


食器が擦れ、生物が、熱せられたフライパンで焼かれる悲痛な叫び声が響く。


風呂場ではそんな音は何一つ届かず、水がタイルを叩く音だけがクロウの鼓膜を支配していた。


ゆっくりと、頬に指を当てる。


母親が撫でた場所は未だにその微かな熱を、柔らかなぬくもりを、覚えている。


雫が、タイルを叩く。





生きることは時に残酷だ。






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