飛べないカラスたち
「なんだよそれ、今まで散々扱き使っておきながら必要なくなれば殺す?ざけんじゃねぇよ、んなこと…」
「『カラス』(僕ら)には、身内がいないから」
ルックが小さく呟く。
消されても誰も気付かない、そう言いたげな発言に、クロウは押しどもって、顔を背ける。
全員が、沈黙を落とす。
「でも、いざとなったら俺たちのほうが有利じゃねぇか」
「私たちの武器が通用すれば、ですね。…向こうもバカじゃない、きっと私たちを消すなら、この武器を奪うか、なにか無効化にするものを作り出すでしょうね」
「……それが、研究室でなにかをしてるっていう、やつ?」
「多分、そうだろう。その可能性もある、何の研究をしているのかはわからなかった」
溜息が漏れる。
とはいえ実感がないというのも事実である。
命の危機を感じたと言うわけでもなく、特に何の変化もない、いつもどおりの仕事。どちらかといえば削除する人間が増えているので必要性があるくらいだ。
それが精神的に追い詰める手段として用いられているのであればまた話は別だが、母親を手に掛けたクロウも、一晩眠り、シャワーを浴びたことで落ち着いている。